山行記:仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳 2008年8月7-10日 (1)
「もしもし!」
「はい、XXです。」
「……」
「もしもし?」
「今何時だと思ってるのっ!」
「はっ! ごめん、ごめん、ごめん!」
こうして南アルプス初山行の第1日目が始まった。
07:47。
前日チケットを買っておいた新宿南口08:20初のJR南アルプス号、タクシーを飛ばしても間に合いそうもない。これが平日の通勤時でなければ可能性がなきにしもあらずだが、木曜日ではまずむりだろう。
服を着てGPSやカメラをザックに突っ込み、ヤマケイのバス時刻表を片手に玄関へ。
ブーツにひもが通してない!
ひもを通して、足を突っ込みいい加減にひもを結んで家を出る。
大通りに出てタクシーを捕まえる。
「新宿南口までお願いします」
「どの道を通りますか?」
これだからタクシーは嫌いなのだ。道を知らなかったらタクシーに乗っちゃいけないのか? ぼくは車に乗らないから当然道は知らない。ユーザーに選択肢を与えるのは良いが…。例えば医者だったら、「がん細胞を切り取ればかなり高い確率で5年間は生き延びられます。ただし、がん細胞の位置が非常に微妙なところなので、手術の成功率は60%ぐらいです。薬で治療することも可能です。この場合5年間生き延びられる確率は手術の場合よりも著しく低くなります。どちらにしますか?」っていう具合に、患者に聞くのかもしれない(アメリカのテレビドラマで見ているとそんな印象を受ける)。「XX通りを通れば近道ですけど混んでいる可能性が高いです。XX通りを通れば遠回りですけど、混んでいる可能性は低いです。西口で下りてもらってそこから南口に歩いてもらうという方法もあります。どうしましょう?」って、情報を提供した上で、ユーザーに選択させるならともかく、いきなり「どの道を通りますか?」って、それじゃあ道さえ知っていればつとまる仕事じゃないのか?
「一番早い道でお願いします」
「それはそうですけれど…」
そんなおはなしをしている暇はないので、ヤマケイの時刻表を開く。アクセスは何度も検討していたのでルートは2つしかないことはわかっている。戸台口経由か広河原経由。戸台口発北沢峠行きの最終便は14:05。広河原発北沢峠行きの最終便は14:25。
戸台口14:05発に乗るためには、高遠駅13:05発の長谷循環バスに乗らなければならない。これに乗るためには、伊那北駅12:07発のJRバスに乗らなければならない。12:07に伊那北駅に着く電車があるのか? それはヤマケイのバス時刻表ではわからない。新宿駅の緑の窓口で確認するしかない。
広河原14:25発に乗るためには、甲府11:30発の山梨交通バスに乗らなければならない。甲府駅に11:30に着く電車があるのか?
新宿口西口前を過ぎ、ルミネ1の甲州街道に入る交差点で信号が赤になる。そこでおろしてもらい、南口まで通勤の人並みに逆らい歩く。
部長に電話して落ち合い、みどりの窓口へ。
10人ほどの列。
やっと自分の番。
「伊那北駅に12:07分に着く電車か、甲府駅に11:30に着く電車はありますか?」
窓口の男性は、タッチパネルをたたきながら時刻を確認。
「伊那北駅にはもう間に合いませんね」
「甲府はどうですか?」
再び、タッチパネルをたたく。
「09:30のかいじ101号に乗れば、11:13に甲府に着きますよ。」
「それは2人分お願いします」
20kgほどのザックを背負って2時間近く自由席はつらいとおもい、指定席。南アルプス号のチケット3600円を無駄にした上に4220円の出費。
とりあえず、小屋までつけることになって一安心。
電車に乗ってゆっくりする。
地図を忘れたことに気づく。
まあGPSがあるから大丈夫だろう。甲府や広河原で替えるかもしれないし。と、それほど心配もしなかった。
程なくして電車が止まる。
線路内に人が立ち入ったために安全確認のため…。
おいおい、今日は勘弁してくれよ!
10分ほどで動き出す。
10分であれば何とかなる。
再び止まる。
また人が立ち入ったといる。
殺意を覚える。
あわせて15分以上の遅延。
ダイヤが乱れれば、遅れを取り戻すどころか、どんどん遅れてしまうのが常。
甲府到着は30分以上遅れることが明らかになる。
絶対に間に合わない。
南アルプス号のチケット代を無駄にし、かいじ101号(指定席)の運賃を無駄にし、北沢駒仙小屋の予約もキャンセル料が発生しかねない上、広河原近辺で夜明かししなければいけない…。
ダメ元で、通りかかった切符確認の人に窮状を伝える。
30分以上ではバスは待ってくれないと思うが、一応確認を取ってみるとのこと。
甲府駅が近くなり、先ほどの人が戻ってきて、やはり11:30発の山梨交通バスは待ってくれないとこのこと。
万事休す。
広河原から北沢峠には南アルプス市営バスしか入れないということがすべての前提になっているが、タクシーはどうか? 電車の中からタクシー会社に電話する。甲府駅に着いたら案内がいるのでそこで聞いてくださいと、要領を得ない。しかたがないので南アルプス市営バスに電話し、タクシーで北沢峠に入れないのか確認する。入れないとのこと。甲府駅が近づき、トンネルが増え、電話が途切れがちになる。12:00発のバスがありますというようなことをいっているようにも聞こえたが、電話が切れてしまい確認のしようもない。
ヤマケイのバス時刻表では甲府発広河原行きのバスは11:30発の次は14:00になっている。12:00はない。
ないものの、12:00があるかもしれない可能性にかけることにした。なかった場合、甲府駅から広河原までタクシーという選択肢も考えられる(出費がかさむ…)。
甲府駅に着き南口へ(ヤマケイのバス時刻表には主要な駅の地図が出てあり、甲府駅の地図もあったので、バス停は南口であることがわかった)。
バス停に着くと、なんと、12:00がある!!
(つづく)
| 固定リンク
「山行記」カテゴリの記事
- 山行記:奥多摩小屋~七ッ石山~高丸山~日陰名栗山~水根 2012年5月19-20日(2012.05.23)
- 奥多摩むかしみち 2012.05.12-13(2012.05.13)
- 山行記:鷹ノ巣山(2012.05.05)(2012.05.08)
- 山行記:涸沢(奥穂高岳) 2011.09.23-25(2011.09.27)
- 山行記:涸沢(奥穂高岳) 2011.09.23-25 トラックデータ(2011.09.29)


コメント
なんだか 読んでてはらはらしてきちゃいました
この後の物語がどうなるのか 早く知りたいですね 笑
とりあえず ここにアップされているのだから
無事に帰って来れたのでしょう
お疲れ様
投稿: いっき | 2008年8月10日 (日) 21時57分
時点で私も気付くべきだった。初犯じゃないからねぇ・・。悪い予感が
はずれてくれ・・と自宅に電話したら・・出るじゃないの! 本人が!
私はもう30分も待ち合わせ場所にいるのだから、駄目もとでキャンセル
するなり、何とか指示してくれる様に伝えたのに、一向に電話もしてこない。
まさか靴に紐さえ通してなかったとは!! 連日多忙なのがわかってた
から何も言わなかったけど・・。正直心拍血圧上がりっぱなしで発作を
起こしそうだったわよ。
ただ、あの状況下で慌てまくりながらも諸手配を進めて行ったのはすごい
と改めて感心しました。
投稿: Yukiichigo | 2008年8月11日 (月) 00時10分
参謀は、文才もあるんですね。(^_^)
部長の鬼のような形相は目に浮かぶが・・・(^_^);
参謀の慌てているけど、全然慌てているように見えない表情が目に浮かぶ・・・(^_^);
おもろい、面白すぎる・・・。
ネタ作りのための確信犯じゃないのか、この遅刻は?!
早く続きが読みたいっす。
投稿: 部員一号 | 2008年8月11日 (月) 15時17分
いっきさん
ぼく自身もかなりはらはらしました。
最悪の場合、南アルプス市広河原山荘あたりに泊まって始発で仙丈ヶ岳ということも可能なので、まったく登れないことはないと確信していたので、パニクることはなかったですが、ちょっとしたスリルを楽しむことはできました。
投稿: 雪山でミルクティ | 2008年8月11日 (月) 20時58分
Yukiichigo-chan
初犯じゃないって…聞こえの悪い!
連絡が遅くなったのは悪いけれど、連絡してもバスチケットの払い戻しはできないことは明白だったし、それ以上に、どういうルートが可能なのか検討するほうが優先順位が高かったから。バスチケット分をけちったために結局、いけなくなるほうが損失が大きいから。
結果、(ついていたという面も多分にあるけれど)北沢峠に同日たどり着けたのでめでたし、めでたしだよね。
投稿: 雪山でミルクティ | 2008年8月11日 (月) 21時04分
部員一号さん
そこまで体は張ってないです
。
漫才師だったら、やりかねないだろうけれど、ここまで出費をしてネタ作りはしません。
(結果、おもしろおかしく書くという形でネタにはしてしまいましたが…意図的ではないですよ、絶対に)
ついでですが、部員一号さんには、すっかり鬼軍曹のイメージが定着しちゃってるみたいですが、そんなことは全然ないですよ。乾徳山のときをみてもらえばわかりますし(まあ、はなし的にはおもしろいですけどね)。結構気いつかい屋さんです(ちょっと口調がきつかったりすることもありますけどね)。
投稿: 雪山でミルクティ | 2008年8月11日 (月) 21時06分